抗がん剤などの治療により疲労・倦怠感、便秘、食欲不振、ほてりなど副作用が現れた場合、対処法の一つとして積極的にリラックスした状態を心がけることがあります。リラクゼーションは療養生活において精神的、肉体的な緊張から解放するための手段です。睡眠を得ることにもつながります。自身をリラックスさせる方法は人それぞれですが、ここではリラックスの例として、入浴・足湯、運動、アロマセラピー、音楽、読書、動画鑑賞と、関連アイテムやサービスを紹介します。
入浴・足湯
リラックスを得る方法として入浴を取り入れます。入浴が体にとって良い習慣であることは周知の事実ですが、実際に科学論文でも客観的にそのことが報告されています。例えば20歳以上の静岡県民6,000人を対象に2012年に実施した横断的アンケート調査では、毎日入浴をする人は良好な主観的健康状態、十分な睡眠と休息、低レベルのストレス、高い主観的幸福感を持っていることが示されました。
入浴方法についてはシャワーよりお湯につかる方が良いという報告があります。40℃で10分間の入浴を2週間とその後のシャワー2週間を行い、その影響を比較した被験者38人のランダム化比較試験でも、入浴は温熱作用による血流循環を良くするだけではなく、自己申告による健康と皮膚状態、笑顔がシャワーより優れ、また倦怠感やストレス、痛みもシャワーに比べ大幅に低い結果でした。
したがって、お湯の温度は40℃程度に調節するとよいでしょう。また全身浴ができない時には足湯もよいでしょう。足湯では温度を少し高めにすると気持ちよく感じられます。お風呂にはご自身が好きな入浴剤、入浴グッズ等を利用することで、リラックス効果を高めることが期待できます。
森林浴
外出して自然と触れ合うことはリラクゼーションを得られる方法の一つです。
森林浴が免疫機能に良い影響を及ぼすことが報告されています。日本医科大学の研究では、東京都内の会社に勤める37~55歳の健康な男性12人が森林地帯で散歩をする2泊3日の森林浴旅行を体験し、血液中の細胞の変化を調べたところ、12人中11人に旅行前と比べてNK(ナチュラルキラー)細胞の活性化が認められました。また、同じ研究グループの続報ではそのNK細胞の活性化は7日間持続していたことと、尿中のストレスに関連があるアドレナリン濃度が大幅に低下したことが示されました。
森林にはフィトンチッドというリラックス効果を誘導する物質があることが知られています。このフィトンチッドがNK細胞の活性に関与している可能性があることが示唆されていまが、詳しいメカニズムはまだ解明されておらず、今後の試験が待たれます。
したがって、温泉と森林浴を楽しむための旅行を計画して出かけることも一案です。利用施設にもよりますが、貸切り風呂や入浴着などを利用することで、術後の患者さんが安心して温泉を楽しめる方法等もあります。
乳がんの手術を受けた患者さんの手術跡をカバーする入浴着は、全国の温泉等入浴施設で着用が可能です。当サイトでは、ホームページで入浴着の利用について案内をしている全国の入浴施設を紹介しています。
適度な運動
ストレッチ、ヨガなどで体をほぐすことや散歩など、軽い運動を取り入れます。
ヨガは、標準療法に伴ううつ病や気分障害に対する治療や倦怠感の対処、生活の質の改善のために実践されます。臨床試験では、ヨガにより抑うつと関連性のある炎症性サイトカイン産生の減少が観察されています。またヨガを行うことでストレスを和らげる効果があるとされる神経伝達物質のGABA(ギャバ)の増加が報告されています。
近年はオンラインも選択肢の一つとなり、気軽にできる運動の一つですが、治療中の体調の変化や、術後の後遺症等で術前と比べ可動域の変化を伴う場合がありますので、担当医や医療従事者と相談したうえで行いましょう。
当サイトの「がん患者に対するヨガの効果と免疫との関係」でもヨガに関する効果などを詳しく説明していますので、そちらもご覧ください。
ストレッチやウォーキングなどの運動は、臨床試験の結果から生活の質を向上させ、疲労感の軽減に効果があるとされています。ラジオ体操を取り入れた臨床試験では、乳癌関連のリンパ浮腫の軽減に効果を示したという報告もあります。
運動を行う目安として例えばウォーキングは、がんの補完代替医療ガイドブック【第3版】によれば、1週間で3~5時間(普通の速度;約3.2~4.7km/時間)とされていますが、担当医や医療従事者と相談したうえで、体調に合わせたプログラムを実施しましょう。
当サイトの「がん療養中の運動効果と運動を行う上の目安」でも運動の効果や目安などを紹介していますので、そちらもご覧ください。
アロマセラピー
がん患者さんにとってのアロマセラピーは、不安やうつ症状などの精神的症状や、がんに伴う痛みなどの身体的症状の改善、また副作用の軽減効果を目的として利用されています(がんの補完代替医療ガイドブック【第3版】;厚生労働省 参照)。
アロマセラピーは植物成分の精油(エッセンシャルオイル)をお風呂に数滴入れたり、ディフューザーで拡散し吸入する方法や、マサージで皮膚から吸収する方法などでリラックス効果を図ります。エッセンシャルオイルは40種類以上使用されていますので、その中でご自身の好みに合った香りと濃度を選んで楽しみます。
種類によってはホルモン療法に影響する可能性があることや、まれに皮膚障害などがあることから、エッセンシャルオイルを使用する際は担当医等医療従事者と相談の上、使用されることをお勧めします。
当サイトの「がん治療の症状に対するアロマセラピーの効果」でもアロマセラピーについて紹介していますので、そちらもご覧ください。
音楽
自分の好みを音楽を聴くことは気分転換ができ、リラックスに繋がります。化学療法など標準療法の補完療法としての音楽療法は、乳癌患者に対し、うつ病や気分障害、不安の軽減や疼痛管理に実施可能とされています。
音楽療法の効果や音楽の療養生活への取り入れ方について当サイトで紹介していますので、そちらもご覧ください。
読書
読書は成人男性の抑うつ症状の軽減、不安やうつなど心理的問題を緩和するための有益とされています。
本や雑誌などの購入の選択肢として従来の紙による本・書籍の他に、スマホやパソコン等にダウンロードする電子書籍があります。
映画やTVを見る
大阪国際がんセンターで実施された臨床研究では、落語や漫才など寄席による”笑い”ががん患者さんの認知機能や疼痛に対し改善効果が認められた、との報告があります。テレビや動画配信サービスでお笑い番組を視聴するなども一案です。
人と触れ合う
家族や友人と会話を楽しんだり、患者会や患者サロンなどに参加してみましょう。お近くの患者会や患者サロン(内部リンク)は各自治体ホームページから探せます。
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