がん患者に対するヨガの効果と実践ポイント

抗がん剤治療による悪心・嘔吐、食欲不振、倦怠感、ほてり、便秘などの副作用の対処法としてリラックスをすることが当サイトを含め多くのがん関連情報サイトで勧められています。ヨガはリラックスを得る方法の一例として挙げられています。ここではヨガを取り入れたときの効果について、がん患者さんを対象にした無作為化(ランダム化)比較試験の結果を踏まえて紹介します。


臨床試験結果に基づいたヨガの位置づけ

ヨガはストレスコーピングの観点から言えば、いわゆるストレス解消の気晴らし型のコーピングに位置付けられます(ストレスコーピングについては当サイトでも紹介していますのでご覧ください)。ヨガは、ゆっくりとした動きとポーズを通常の時間の倍をかけて鼻呼吸し、日常生活ではあまり使われない全身の筋肉に働きかけながら行うことが特長です。ヨガの一連の動作を一定時間設け継続して行うことにより、こころや体に良い効果をもたらすことがわかってきています。

がんの療養中におけるヨガの介入は、これまで行われてきた無作為化(ランダム化)比較試験で効果が示され、欧米では補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine:CAM)の一つとして認められています。

そのためヨガは標準療法を補完する役割を担う方法として期待されていますが、症状により効果が期待できるものもあればそうでないものもあります。日本緩和医療学会発刊の「がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス2016年版」と米国統合腫瘍学会(SIO)による乳がんの統合医療のガイドライン(米国臨床腫瘍学会(ASCO)承認)に基づいて整理すると以下のようになります。

効果があると認められた

  • 乳がん患者の痛みを軽減する可能性がある
  • 女性乳がん患者及び女性乳がんサバイバーに対し倦怠感を軽減させる有用な方法
  • がん患者の睡眠障害を軽減する可能性がある
  • 治療中のがん患者の不安、抑うつを軽減する可能性がある
  • 治療中のがん患者の心理的落胆・自覚ストレスを軽減する可能性がある
  • 治療中のがん患者のQOL(生活の質)を改善する可能性がある
  • 乳がん患者のホットフラッシュを軽減することが示唆される
  • 創傷治癒促進効果に炎症性サイトカインの抑制効果が関与している可能性

効果が認められなかった、あるいは報告なし

  • がん患者の悪心・嘔吐の軽減
  • 呼吸器症状(報告なし)
  • 泌尿器症状(報告なし)
  • 乳がん患者のリンパ浮腫

上記に加え、ヨガの介入で活力が向上するという試験報告なども加えると、ヨガは精神神経系症状の改善に補完的役割を持つと考えられます。

※なお、臨床試験における患者数や採用したヨガの種類、実施期間等条件が異なるため、さらに臨床試験を重ねその結果の精度を高める必要があります。

ヨガと免疫との関係

上記にある“炎症性サイトカイン”とはどういったものでしょうか? 炎症性サイトカインとは、T細胞やマクロファージなどの免疫細胞から炎症作用を促進させるために分泌される因子の総称で、その仲間にインターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、および腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)などが挙げられます。これらの炎症性サイトカインは通常一時的で炎症がおさまる頃には減少しますが、逆に長く存在すると慢性炎症を引き起こし、結果として身体機能の低下を助長する可能性があります。がんやリウマチなどは炎症性サイトカインが持続して高くなっている状態です。そのような炎症性サイトカイン対して、ヨガの介入によりその発現が抑えられることがこれまでの無作為化(ランダム化)比較試験で示されています。

乳がん患者200人について週2回90分12週間行うヨガグループとヨガを行わない対照グループに割り当てた試験では、治療後3か月間までにヨガグループは対照グループと比較して3つの炎症性サイトカイン、IL-6、IL-1β、およびTNF-αのレベルが大幅に低下しました。また、がん関連の疲労を伴う乳がん患者が12週間のヨガプログラムに参加した試験では、TNF活性のマーカーである可溶性TNF受容体タイプII(sTNF-RII)の血漿中のレベルはヨガグループで安定したままでしたが、対照グループでは増加しました。慢性炎症性疾患の患者86人を対象とした10日間の短期的なヨガベースのライフスタイルプログラムを実施した試験では、10日目までにIL-6およびTNF-αの平均レベルの低下が観察されました。近年はオンラインを利用したヨガが広がりを見せていますが、骨髄増殖性腫瘍患者48人を対象としたオンラインヨガ(60分/週)試験でも、12週目のTNF-αレベルはベースラインに比べ減少しました。さらに細胞レベルでも、標準治療を完了したがん患者に対しヨガの呼吸法の練習を12および24週間実施した試験では、 NK(ナチュラルキラー)細胞数はベースラインレベルを大幅に超えて増加しました。

このように、ヨガの介入はがん患者内の炎症性サイトカイン産生を減少させるという点から、免疫との関連があることが示唆されます。加えて、治療未経験のうつ病患者の血漿中炎症性サイトカインのレベルは健常人と比べ4~5倍高い数値を示すことが報告されていることから、ヨガの介入による不安や抑うつの軽減は炎症性サイトカインの減少と関連していると考えられます。

ヨガと神経系との関係

ヨガの介入は不安や抑うつなどの軽減に作用するメカニズムの一つとして、内分泌系ホルモンや神経伝達物質へ関与することも挙げられます。上記でも紹介した慢性炎症性疾患の患者を対象とした試験では、炎症性サイトカインレベルの低下が観察されたことに加え、コルチゾールの平均レベルが低下しβ-エンドルフィンが増加しました 。コルチゾールとは、副腎皮質から分泌される、いわゆるストレスホルモンの一種で、多く分泌されると交感神経優位の興奮状態になりますが、減少すると副交感神経優位のリラックス状態に変わります。またβ-エンドルフィンとは、脳内で作用する神経伝達物質の一種で、鎮痛効果や幸福感などが得られる作用があります。直接的な因果関係は不明ですが、ヨガの介入によるこれら物質の作用により、結果として患者の不安や抑うつなどが軽減されたと考えられます。

さらにヨガの介入は脳内のGABA(ギャバ)にも影響を与えることが示されています。GABAは神経の興奮を抑える作用のある神経伝達物質で、ストレスを和らげる効果があることが知られ、チョコに含まれることでも有名です。例えば、健常者を対象にヨガと歩行運動(ウォーキング)の効果を評価したランダム化比較試験では、1回60分間のヨガを週3回12週間続けたグループ(19人)はヨガと同じ代謝量と合わせたウォーキングのグループ(15人)と比べGABAの増加により気分が大きく改善され、不安が大きく減少しました。また大うつ病性障害患者を対象とした試験でも、ヨガの介入によるGABAの増加がうつ症状の減少に相関したことを示しました。

ヨガの実践と注意点

ヨガは従来の教室へ通うスタイルから、近年はライブ配信や録画などオンラインヨガも選択肢の一つとなりました。感染症予防でウォーキングなど屋外での方法が取れない場合に有効かと思われます。

ヨガを実践する上で一般的に注意すべきことは、腰や膝、背骨などに持病がある人や体調のすぐれない時は無理をしない、食後2時間以上は時間を空けることが望ましい、妊娠中は腹部を圧迫するポーズや、片足で立つようなポーズは控える等が挙げられます。

一方、がん患者さんに対するヨガの実践については、治療中の体調の変化や、術後の後遺症等で術前と比べ可動域の変化を伴う場合がありますので、担当医や医療従事者と相談することが良いでしょう。状態などを考慮したうえでご自身にあった範囲のプログラムを構築しましょう。


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参考文献・ウェブサイト
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