乳がん治療中の「食事と栄養」オンラインセミナー

今回、昭和大学ブレストセンターとNPO法人キャンサーリボンズでは、乳がん治療中の「食事と栄養」オンラインセミナーを開催いたします。医師と管理栄養士によるお話をはじめ、オンライン料理体験・交流時間もございます。乳がん治療中の「食事と栄養」について困りごと、知りたいことをお持ちの方は、この機会にぜひご参加ください。
がんの療養中は治療や生活など様々なことに対してストレスを抱えます。当サイトでは、そのようなストレスに対処するため、療養生活に役立つ情報を提供していますが、近年、ストレスの対処方法としてストレスコーピングを療養期間中に組み入れることで、不安や抑うつが軽減されるだけでなく、免疫細胞へもプラスに作用することががん患者を対象とした試験で数多く報告されています。ここではストレスコーピングをご自身の療養生活に取り入れるため、コーピングの方法を整理し、具体的な実践につなげられるポイントを紹介します。
がんの診断、治療を含めがんの療養生活期間中は非常に様々なストレスがかかります。療養生活にかかるストレスは、例えば面接や発表会のような数分や数時間で終了する短期ストレスではなく、数週間や数カ月あるいは数年にわたって続く慢性ストレスです。慢性ストレスは、がんに対して悪影響を及ぼし、免疫系はそのがんの経過に影響を与える重要な役割を持つことが示されています。
ストレスに対する処理プロセスとしての認知、評価、対処は遺伝や環境的要因から個人差があります。そのためストレスの度合いやストレスの期間に依存して生体反応が免疫系へ大きな影響を与える可能性があります。実際に慢性ストレスは免疫細胞の増殖やウイルスに対する反応性を抑制することが示されています。
そのようなストレスの原因に対しうまく対処すると、がんへの心理的適応と健康状態の改善が促進される可能性があることから、これまでのがん患者を対象にしたランダム化(無作為化)比較試験では様々なストレス管理介入による効果の評価について研究がされてきました。
これまで臨床試験で検討された多くのストレスに対する介入は、ヨガやマッサージ、フィットネスのような物理的な対処方法や、認知行動療法、集団精神療法、支持表現療法等の精神療法等があげられます。これらのようなストレスの対処方法を“ストレスコーピング”と言います。ストレスコーピングはその内容から以下のように大別されます。
● 問題焦点コーピング
ストレスの原因に対して自らが解決のために行動する方法です。周囲の協力を得ることやストレス源からの回避行動も含まれます。
●情動焦点コーピング
感情を発散あるいは抑制することによるストレス軽減方法です。
●認知再評価型コーピング
ストレスの原因に対して、これまでの見方や考え方を転換する方法です。
●社会支援探索型コーピング
他者や信頼する人に相談したり、アドバイスを求める方法です。
●気晴らし型コーピング
適度な運動や趣味などのいわゆるストレス解消方法です。
がんの療養生活でのストレスコーピングは複合的なものと考えられます。例えば、医療従事者へ相談する、患者会・患者サロン、セミナーへ参加する、当サイトのようながんに関する情報提供サイトを利用する方法は問題焦点コーピングでもあり社会支援探索型コーピングでもあります。また、国立がん研究センターの情報サイト、がん情報サービスや当サイトを含めたがんに関する情報サイト内の副作用の対処法で紹介している方法を試してみることは問題焦点コーピングでもあり、ヨガや適度な運動をすることは気晴らし型コーピングにも当てはまります。さらにそれらのコーピングを実施したことでストレス源に対する発想の転換がなされたのであれば、認知再評価コーピングになります。
がん患者を対象としたランダム化(無作為化)比較試験では、様々なコーピングにより患者の利益となる効果が数多く報告されています。
認知行動のアプローチでは、リラクゼーショントレーニング、認知再構築および対処スキルトレーニングを含むストレス管理の介入を10週間の受けた乳がん患者は、1年にわたって思考侵入、不安や精神的苦痛が大幅に減少しました。また別の試験では、介入を受けた患者は、不安の有意な低下、食習慣の改善、喫煙の減少等を示しました。
気晴らしコーピングの例としてヨガは、乳がん患者の苦痛、不安、うつ病に対する大幅な軽減効果を示しました。慢性的炎症は身体機能を低下させる原因になりますが、定期的なヨガにより治療後3か月後の時点で炎症性サイトカインが減少しました(ヨガの効果の詳細について当サイトで紹介していますので、そちらもご覧ください)。ヨガのような物理的介入の他の例として、放射線を受けている乳癌患者に対し週3回5週間のマッサージ療法、化学療法を受けている結腸直腸癌患者に対する鍼灸、および化学放射線を受けている子宮頸癌患者に対するヒーリングタッチはNK(ナチュラルキラー)細胞数またはNK細胞障害性の増加または安定化させました。
一方、精神的介入の一例としてマインドフルネスがあります。マインドフルネスは自身の今のあるがままの状態のみに最大限の注意を向ける瞑想方法です。がん患者に対する臨床効果として、8週間マインドフルネスを実施した乳がん患者は不安やうつ病が軽減し、また別の試験では乳癌療法後のマインドフルネス介入により、6週間後には免疫を活性化するT細胞を多く有することが示されています。マインドフルネスの効果の詳細についても当サイトで紹介していますので、そちらもご覧ください。
このようにがん療養におけるストレスコーピングは、外科的手術や放射線療法などの標準療法を補完することで、がん患者の不安や副作用などの負の要素を軽減させるだけでなく、QOL(生活の質)を改善させ、さらに免疫細胞に対しても密接に作用し、身体機能の維持および向上に貢献することが明らかになってきました。
ストレスを軽減させるため、コーピングを実践してみましょう。コーピングは療養生活の環境の中で受けるストレスについて軽減できる方法をひとつひとつ実際に試しながら見つけることが大切です。
コーピングのポイントは主に以下の通りです。
ご家族や知人、医療従事者等とどんなコーピングがあるかについて話し合いながら項目を決めリストを作成することもよいでしょう。
例えば、厚生労働省独立行政法人労働者健康福祉機構発行の「こころの健康 気づきのヒント集」は職場でのストレスの対処法をテーマとした冊子ですが、ストレスとうまく付き合う具体的な方法例としてストレッチ、睡眠、親しい人と交流する、笑う、呼吸する、落ち着ける環境を作る、趣味を持つ、自然に触れ合う。適度な運動をする、が挙げられています。
当サイトでも、気晴らし型コーピングとして、ヨガ、音楽、アロマセラピーなどリラックスするための工夫例を、また問題焦点コーピングおよび社会支援探索型コーピングとして、全国にある患者会・患者サロンについて自治体ホームページ等を通じて紹介していますので、ご参考にしてください。
あなたのセルフケア方法をお聞かせください。
あなたのセルフケア方法を共有しませんか? きっと、ほかのがん患者さんやご家族にとっても役立つヒントになることでしょう。以下のフォームにご記入いただくと、このページにあなたのセルフケア方法が紹介されます。
Q:あなたが心がけているストレスの対処方法をお聞かせください。
※セルフケア方法に商品・サービスを利用された場合は、その商品名・サービス名と、ご利用した感想をお聞かせください。
コメント